JAL、視界不良 融資銀行足並み乱れも
日本航空(JAL)が先週まで「間違いない」と明言していた07年3月期連結決算での当期黒字が一転、大幅赤字に転落する。低空飛行を続ける「日の丸航空」は赤字決算でうみを出し切り、再浮上するのか。多額のカネを貸し付けている金融機関や政府も、再建の行方をかたずをのんで見つめている。
業績は「目標クリア」
安倍首相の中東歴訪に同行していたJALの西松遥社長は、予定を急きょ切り上げて帰国し、2日午後に東京証券取引所での会見に臨んだ。
「少なくとも昨年は指摘されなかった。我々の問題ではなく、会計基準の厳格化という全体の流れがある」
西松社長は監査法人からの指摘で繰り延べ税金資産を大幅に取り崩し、当期赤字に転落することになった理由を、こう解説。自らの収益見通しの甘さが原因ではない、と強調した。
先月23日の定例会見で黒字の見通しを示したばかり。「公約違反では」との質問が飛んだが、「申し訳ないと思っているが、(経常利益などで)当初の目標は十分クリアしたと思っている」と釈明した。
確かに、今年に入ってからの業績は好調だ。利益率の高い国際線のビジネス需要を中心に「席が取れないとの苦情があるほどだ」(西松社長)。本業のもうけを示す営業利益の予想は、大幅に上方修正した。
JALは経営再建に向けた4カ年の中期経営計画に、4月から取り組み始めた。西松社長は「手応えがある」と述べ、現時点では計画を見直して追加リストラに踏み切る可能性を否定した。先週には主取引銀行に業績予想修正の内容を伝えた上で、融資を受けたことを明かし、「資金繰りへの悪影響もない」とする。
「きょうの午後、業績修正を発表したいと思います」。JALが監督官庁の国土交通省に対し、業績修正を発表すると伝えたのは、直前の2日正午だった。
同省航空局の幹部は、営業利益と経常利益が大幅に上方修正された点に注目。「乗客が増え、リストラの効果も着実に表れている。(繰り延べ税金資産の取り崩しで)当期損益を悪化させる要因がほぼ無くなった」と、前向きに評価した。
ただ、同省には「引き続き厳しく見続ける。経営計画が着実に実行され、(08年3月期の)中間決算で営業利益がどう伸びるかが重要で、心配だ」と話す幹部もおり、JALへの「警戒」は怠っていない。
一方、内閣官房幹部は2日、JALへの公的支援の可能性について「そんな時代ではない。業界の再編で対応できる」と突き放した。個別企業の経営不振を政府が積極的に支援することは、「改革イメージ」の後退につながりかねないとして、距離を置いている。
格下げ迫られる金融機関
JALに融資する大手銀行に、「赤字転落」の説明があったのは先週末のことだ。「支援を続ける姿勢に変わりはない」と、各行は今のところ冷静に受け止めているが、再建計画の進み具合によっては足並みに乱れが生ずる可能性がある。
2月のJALの再建計画発表を受けて、主取引銀行の日本政策投資、みずほコーポレート、三菱東京UFJ、三井住友の4行はJALに対し、社債の償還などに必要な総額711億円の融資を実行するなど支援態勢を明確にしてきた。
状況が変わったきっかけは、銀行に対して定期的に入る金融庁の検査だ。まず昨年11月から検査を受けていた三井住友銀行に対し、金融庁の検査官はJAL向け融資について、回収できない恐れがあると格下げを迫ったとされる。格下げになると、継続的な融資が難しくなる可能性がある。
金融庁は続いて、三菱東京UFJ、みずほコーポにも検査に入った。3月に検査が終わった三菱東京UFJも格下げを検討中ともいわれ、まだ検査が続くみずほも同じ対応を迫られる可能性がある。
すでに中央三井信託銀行がJAL向け債権を外資のゴールドマン・サックス証券グループに売却したとみられ、JALとの取引を打ち切る銀行も出ている模様だ。
動向が最も注目されるのは、来年10月に民営化を控える政府系金融機関の日本政策投資銀行だ。米国の同時多発テロに伴う緊急融資などで、融資残高が3千億円超と最も膨らんでいる。政投銀は支援の姿勢を崩していないが、金融庁検査がやがて入れば、JAL向け融資のランクを見直さなければならない事態も予想される。
今回、赤字に転落したのは、JALの監査を引き受ける新日本監査法人の姿勢が厳格化したことがきっかけだ。
カネボウの粉飾決算事件に加担し、日興コーディアルグループの不正会計問題にも関与した旧中央青山(現みすず)監査法人は今夏、事実上の解体に追い込まれる。新日本の幹部は「甘い監査で問題を引き起こせば法人の存続にかかわる」と危機感を隠さない。
JALに対する視線がますます厳しくなるなか、銀行団からも「『日の丸航空会社』を突き放すわけにいかないが、言われるがままの融資はできない」(大手行幹部)という声も漏れる。
(朝日新聞 より)